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今回の法改正では、極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約は無効とするルールが新たに設けられた。「根保証契約」とは、将来発生する不特定の債務について保証する契約を言う。これまで、根保証契約を締結して保証人となる際には、主債務の金額が不明のため、保証人が想定外の債務を負うことになるケースも見られた。今回の法改正では個人が保証人となる根保証契約については、保証人が支払いの責任を負う金額の上限となる「極度額」を定めなければ、保証契約は無効となる。この極度額は明瞭に「〇〇円」といった形で定め、書面に記載する必要がある。また、個人が保証人になる根保証契約については、次の事情(元本確定事由)があった際には、その後発生する主債務は保証の対象外となる。①債権者が保証人の財産について強制執行や担保権の実行を申し立てたとき②保証人が破産手続き開始の決定を受けたとき③主債務者又は保証人が死亡したとき。 契約書や重要事項説明書上これまであいまいとなっていた原状回復と敷金に関して明文化された。例えば、「敷金」ではなく「保証金」という名目で金銭の授受をし、賃貸契約終了後、退去した場合でも賃料等の未払いがないにも関わらず「敷金の定義」や「敷金返還請求権の発生時期」についての規定がなかったため適正に返金されないという事例があった。改正後では、これまでの実務に従い、敷金を「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸に交付する金銭」と定義した。その上で、判例に従い、賃貸借契約が終了して賃借物が返還された時点で敷金返還債務が生じること、その額は受領した敷金の額からそれまでに生じた金銭債務の額を控除した残額であることなどのルールが明確化されている。 新民法では、貸室設備等に不具合が生じ、物件の一部減損によって借主の使用収益が妨げられ、減損の原因が借主の責任でない場合は、賃料が減額されるようになった。地震や台風などの自然災害による一部減損に於いても賃料は減額の対象となる。今後は、「電気が使えない」「エアコンが動作しない」「雨漏りがする」などの状況に応じて賃料減額割合と、免責日数が契約書に明記されるのが一般的な対応となる。 これまで賃貸される部屋で雨漏りが起きたり、備え付けのエアコンが故障し賃借物の修繕が必要となった場合でも、賃借物はあくまでも賃貸人のものであるため、賃借人が勝手に修繕を行う事が出来なかった。極端なケースでは、賃貸人が修繕を行ってくれない場合でも、賃借人は一切自己修繕を行ったり手配を行えないといった事も起こり得た。改正後の民法では、①賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知したか、又は賃貸人がその旨を知ったのに、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき②急迫の事情があるときには、賃借人が目的物を修繕する事ができることとされた。この2つのケースに於いては賃借人が部屋を修繕したとしても、賃貸人から責任を追及されることはない。また、賃借人は修繕に要した費用を、賃貸人に請求できる。賃借人の修繕権が定められたことで、賃借人に対して必要以上の修繕費用を請求されないように、新契約書には修繕が必要となった場合の事前通知を要するといった特約を設ける必要があるだろう。また、修繕が賃借人の責に帰すべき事由による場合は、賃貸人は修繕義務を負わないとされている。 建物の賃貸借契約が継続している間に建物の所有者が代わった場合、その後は誰が賃借人となるのか、新しい所有者は賃料を請求することが出来るのかなどの問題があった。これまで規定が無くあいまいとなっていた。改正後の民法では、賃貸借の対抗要件を備えていた場合に、賃借物である不動産が譲渡されたときには、賃貸人としての地位は、原則として不動産の譲受人(新たな所有者)に移転するという規定が設けられた。また、不動産の譲受人が、賃借人に対して賃料を請求するためには、賃借物である不動産の所有権移転登記が必要である旨の規定が設けられた。 改正法では、賃貸借に関するルールの見直しを含む改正事項について、どのような場合に改正後の民法が適用され、どのような場合に改正前の民法が適用されるのか明らかにする経過処置が定められている。令和2年4月1日以降に締結された賃貸借契約については新民法が適用されることとなる。またそれ以前に締結された賃貸借契約には旧民法が適用される。契約が「自動更新」された場合には、更新が新民法施行日よりも後の場合でも旧民法が適用される。施行日後に当事者が「合意によって」賃貸借契約や保証契約更新した時には、改正後の民法が適用される。他方で、施行日前に保証契約が更新後の債務も保証する趣旨でされ、保証について合意更新がされなかった場合には、施行日後も当該保証契約については改正前の民法が適用される。 2020年4月1日より「民法の一部を改正する法律」が施行された。賃貸住宅の仲介・管理業に大きくかかわる部分に関しては各社、契約書等の変更が行われた。今回の改正で、賃貸借契約にかかわる改正点に関して改めて解説したい。大きく分けると「連帯保証人の極度額の明記」「現状回復と敷金の明文化」「一部減損による家賃減額」「賃借人による修繕権」「賃貸不動産が譲渡された場合のルールの明確化」「経過処置」といったものが挙げられる。 今回の改正後の内容としてはこれまでより、賃借人及び、保証人に対して明文化されていなかった部分が明確になった。入居者はより安心して契約が行える状態となったと言えるだろう。